#7 AIDは、親のエゴなのか?

無精子症と診断されてから今日までたくさん涙を流し、いろんな事を考え、きっと携帯で「む」と打ったら最初の予測変換に「無精子」と出てくるぐらい今後の事を検索しまくって今に至ると思います。

やっとみつけた「無精子症で子どもを授かる方法」わずかにみえた光にむかって少しずつ前へ進もうとしている方もいらっしゃると思います。
寺山 竜生 2024.02.28
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今日は、この治療に入る前にほとんどの人が一度は考える『非配偶者間で子どもを授かること(AID)は、親のエゴなのか?』について、お話しようと思います。

広辞苑を読むと「エゴとは、自己中心的で相手の都合を考えずにする自分勝手な行動」とあります。だとすると、子どもの都合や意思を聞いて子どもを産まなければ「親のエゴ」で子どもを授かったことになるはずです。 
このメールを読んでいるあなたも、隣にいるパートナーもみんな親の都合で産まれてきているはずです。そういった意味で子どもを授かることは例外なく「親のエゴ(都合)」なのです。

では、なぜ非配偶者間で子どもを授かると「親のエゴ」を強調されるのでしょうか?

強調される理由はいくつか考えられますが、大きな理由として、親のエゴだという方のどこかに「非配偶者間で産まれた子どもは不幸だ!不幸になる確率が高いに違いない」という思い(固定概念)があるからではないかと思います。

確かに、これまで非配偶者間で産まれた子ども達の中には、自分の出自を悩んだり苦しんだりした方がいたことは否定しません。これまで自分の出自を隠して育てられたこと、父親が自分にまったく興味を示さなかったこと、会話がなく隠しごとの多い家族だったことに悩み苦しみ不幸だと感じる方がいたのも事実です。

しかし、この過去の例を見ると、悩んだり苦しんでいる子供たちの多くは、「非配偶者間で産まれたこと」ではなく、「親と子のかかわり方」で悩んでいることがわかります。

これに対して、最近の無精子症のご夫婦を見ていると「無精子だから精子を提供してもらおう」とすぐにこの治療を選択される方は、ほとんどいないように思います。みなさん産まれる前から何度も何度も夫婦で、子どもの幸せについて悩み、考えて答えを出しています。

むしろ、世の中にここまで真剣に子どもの未来や、家族の将来について考えてから子どもを授かる夫婦はいなんじゃないかな?と思うくらい、考えに考え抜いて治療に進まれています。

だからこそ、親と子のかかわり方を大切に考え、子どもが産まれてからすぐに真実告知(テリング)をしたり、親として子どもを守り、この家に産まれてよかったと思えるような環境を作られているのではないのでしょうか?

子どもが親のエゴで産まれたかどうかは、最終的に親が決めることでも周りが決めることでもありません。
子どもが成長し、自分の人生を振り返って考えたときに、子ども自身がどう思うかだと思います。その時に「子どもが、この父親と母親のもとに生まれてきてよかった。」そう思ってもらえるような関係を作っていけば、AIDは親のエゴにはならないはずです。

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